第3回
神海英雄/SOUL CATCHER(S)
WEB限定無料公開!週刊少年ジャンプの現役編集者が、担当作品オススメの一話を語るスペシャルインタビューだ!マンガへのほとばしる情熱、苦悩、そして制作ウラ話など、ここでしか読めないマル秘情報がもりだくさん!!第3回は、超視覚型(ハイパーヴィジュアル)吹奏楽グラフィティ『SOUL CATCHER(S)』!!では行ってみましょう!推す!
推す!この一話はコレだ!
ジャンプ・コミックス2巻
op.8 ギャロップ
手応えを感じた一話

—本コーナー初となる一話セレクト!やっとタイトル通りになりました、キムさんありがとうございます…。それでは紹介をどうぞ!

キム はい。推す!話は、第5話から続いていた “音羽(おとわ)編”のクライマックスです。

—第8話は、2巻の一番最初ですね。

キム 他人の心が見える特殊能力を持った、神峰翔太(かみねしょうた)っていう高校生が主人公なんですけど。その神峰が目指している、指揮者っていうポジション。そこに就くためには、吹奏楽部のパートリーダーみんなから認められなきゃいけないんですね。で、奏馬(そうま)っていう部長のすすめで、トランペットのパートリーダーである音羽の悩みと向き合う…といったシリーズなんですけど。

仲間といっしょにトランペットを続けたい!音羽の演奏が、父の心を動かす!!

キム なんでこの話が印象に残っているかというとまず、第1話以来の人気が戻ってきた。やっと読者に「あ、面白いんだこのマンガ。応援していいんだ」って確信を持ってもらえたんじゃないかなと、自分では思っています。

—この回でついに、吹奏楽部の部員がたくさん絡んできた印象があります。

キム ストーリー的にも自信がありました。第1話から第4話までで、刻阪(ときさか)に打樋(うてび)と、神峰の仲間が増えていった伏線が、この話でバチーッ!とハマったんですね。誰もついてこないと孤独を感じている音羽と、音羽の高い演奏技術に引け目を感じ前に出られない奏馬。すれ違う2人が打ち解けたときに、トランペットパートが、良いまとまり方をするんじゃないか、って神海先生と話していまして。

—その狙いが、きれいに成功したストーリーが「ギャロップ」であると。

キム 『SOUL CATCHER(S)』の連載が始まってからというもの、何が読者に喜んでもらえるんだろうって、神海先生も僕も手探りでやってきたんですが、この話が完成したときには2人で手応えを感じていましたね。神峰のスゴさも出せました!

“指揮者”神峰の初陣!その才能に、部長の奏馬も舌を巻く!!

神海先生の超演出力

—この一話で、推す!一コマはありますか?

キム 馬の化けモンみたいなのが出てくる見開きですね。

—「音楽が 完成する!!」と神峰が感じた直後のコマですね。どうしてでしょう?

キム 先生の演出力とストーリーが、きれいに噛み合いました。この馬、頭が音羽、胴体が奏馬、足がパートメンバーと、『トランペット吹きの休日』っていう曲をモチーフとして各々の音を視覚化したものなんです。

—赤ん坊はなんでしたっけ…。

キム これも、音羽の心ですね。ド迫力の頭は、高い実力を持つ奏者としての一面。赤ん坊は、父親に萎縮して本音が言えないという幼い一面です。この話は、音羽が「吹奏楽を続けたい」という純粋な気持ちを、音に乗せて父親に届けるというテーマもありました。それに対する、指揮者や奏者たちの「行けー!届けー!」っていう願いが、絵という形で気持ちよく出ていますよね。先生もよく描けたって満足されていました。

音の“怪獣”が、崖を駆けあがる。みんなの気持ちと演奏が1つになった瞬間!

キム まあその絵、登場人物がほとんどいないんだけど(笑)。

—たしかに(笑)!いやでも、音を絵で表現するって難しくないですか。

キム 単純に音符を描いて終わり、っていうのは神海先生がイヤだったみたいで。自分にしか描けない絵で勝負したいって、前作の『LIGHT WING』の頃からおっしゃっていましたね。自分流の表現が完成するまで、だいぶ苦労されたみたいですけど、考え抜いた結果だからこそ演出がすごい。想像つかないアイデアをバンバン出してくるんで、打ち合わせ楽しいです。

神峰は弱いけどカッコいい!

—推す!セリフも教えてください!

キム セリフだと…この「ギャロップ」の前の第7話に出た、「心まで二番手になるな!!」ですね。言ったのは神峰。

—これはどうしてでしょう?

キム いやもう、単純によくないすかこれ(笑)。

—キムさん、具体的に!

キム すいません(笑)。神峰って、ジャンプの主人公としては、かなり異質だと思うんです。っていうのは、神峰って超弱いんですよ。心が見える能力は彼のオンリーワンのものなんだけど、楽器は弾けないし、指揮者の経験も知識もない。心が見える能力のせいで抱えたトラウマもあるから、人間の心に関わることにもすごくビビってた。

—刻阪と出会って、神峰は変わりましたね。

キム 相棒の刻阪と吹奏楽やりたいから、自分を変える決心をするんです。人間関係で絶対に引かないっていう強さを持ったのはそこから。「吹奏楽部(みんな)が 音羽先輩の味方になってくれんなら…怒られても いい!!」ってセリフがあるんですけど、嫌われ役を買ってでも、指揮者としてみんなを一つにしようとする覚悟がある。これってカッコいいと思うんです。

中音の“2nd”を担当する奏馬。自分の本当の役割を見いだせるか!?

—じゃあ、神峰は強く成長したんですね。

キム いや、弱い(笑)。…でも、立ち上がるんです。シリーズが始まるときって神峰は必ず、相手の意見にやりこめられるんですよ。最初に悩みを解決した打楽器の打樋も、2巻で出会うライバルも例外なく。それだけ弱いのに、相手の事を観察して、考えて、本人よりもそいつの事を知ろうとするんです。

—心を削りながら、人の心に立ち向かっていく姿勢がカッコいいんですね。

キム そうです!ジャンプっていわゆる主人公無双というか、最初から強い憧れ型のキャラが多くて。それもカッコいいんですけど…。自分にしかやれないことを1個1個考えて、そのたびに傷ついても折れずにぶつかる。そんなカッコよさもあってもいいよね。って神海先生と、連載前から話してたんです。

—神海先生も、同じ考えなんですか。

キム むしろ神海先生でないと描けないテーマなんじゃないか、って思いますね。神海先生って視覚的な演出の上手さに定評がある方なんですけど、どちらかというと、キャラの心情に寄り添うタイプの作家さんだと僕は思っていて。

—…というと?

キム たとえば“このキャラにこう言わせたらいいんじゃないですか”と提案しても、それが神海先生の考えと違ったら「このキャラは絶対にそんなこと言わない」と引かないんです。先生はずっとキャラの心を考えているから、決してブレない。ぶっ飛んだ絵はたしかに目立つんですけど、キャラのセリフや、心の動きに対するリアリティが演出を下支えしている。だから“絵だけとんでもないことやってるマンガ”にならないんですよね。

悩める仲間を救いたい…。歯に衣着せぬ物言いが“暴君”の心を揺るがす!!

題材は“組み合わせ”

—吹奏楽というテーマは、先生からの発案ですか?

キム そうですね。…正確に言うと、神海先生は前作のサッカーマンガ『LIGHT WING』、その連載の前に読切を4本描いたんですよ。

—4本も!それ多いほうですよね。

キム はい。そのデビュー作が吹奏楽のマンガ『アンサンブル』。で、次に包丁の実演販売員を描いた『Heart Catcher』。そしてドッジボールの『Dodge The Ball』、クイズ研究会の『Q部!!(キューブ)』ってマンガを描いて。紆余曲折があって、連載はサッカーでやったんですけれども(笑)。…そして『LIGHT WING』の連載が終わってから、『SOUL CATCHER(S)』の読切までだいたい2年。

—そんなに開いたんですね!

キム 定期的に打ち合わせはしていたんです。その間に新作も何本か作ったんですが、上手くいかなくて、お互いに行き詰まった。根本的に見直した方がいいだろうって話が出たときに、僕が2つの質問を神海先生に投げかけたんですよ。「今まで描いた題材の中で、一番描きたいものが描けた作品は?」、「今まで描いたネームの中で、一番自分らしさが出せた作品は?」って。

—神海先生の回答は?

キム 描きたい題材は、もちろん『アンサンブル』――吹奏楽ですと。そして自分らしかったのは『Heart Catcher』だと答えたんですよ。だったら単純な話、吹奏楽でハート掴めばいいじゃんと。両方とも自分が生んだ作品だし、気持ちよく描けるんじゃないですか?と。心(ハート)よりスゴいもん掴もうぜってことで“魂(ソウル)”、神峰と刻阪のダブル主人公だから複数形の(S)。これで『SOUL CATCHER(S)』。

—2作を合わせたんですね!

キム 悩むくらいだったら、描きたいものを描いた方がいいなと。連載も経験したからノウハウもある。神海英雄の持ち味をベストな状態で出せる状況で始められたと思います。御自身が元々吹奏楽部だから思い入れのある題材だし。

—あっ!そうなんですね!今すごく腑に落ちました。

キム もちろんプロの方と比べたらまだまだですけど、詳しいですよ。今でもスゴく勉強しているみたいですね。楽譜とか取り寄せて。

—キムさんも理解はあるんですか?

キム 全然わかんない(笑)。奏者としての感覚も心情も。でもそれが、神海先生はいいみたいです。“わかんない感覚”が身近に欲しいって。吹奏楽って競技人口は多いわりに、マンガの題材としてはマイナーなんで…。

—吹奏楽部、クラスに一人はいたイメージがあります。

キム そうなんですよ、吹奏楽部って絶対あるじゃないですか学校に。多いんです人口は。だから「このマンガを読んで吹奏楽部に入りましたって読者が増えたらいいよね」って話を神海先生としてます(笑)。

これからも“心”に寄り添って

—最後に。この作品の、みどころやメッセージはありますか?

キム 巨大兵器とか怪獣とか、そういうのは出ないマンガですけど…いや、演出面では逆にガンガン出ますけど(笑)。神峰が色んな人の心に寄り添って、悩みを解決していくさまを見て、変な話、「これって僕/私のこと描いてる!」と身近に感じてくれたらいいなと思います。例えば親に進路を決められてモヤモヤしている子とか、周りに合わせ過ぎて上手くいかない子とか。神海先生は悩んでいる人の心から逃げず、寄り添って描くので、そこに注目してほしいです。

理想の指揮者になるために。傷つく恐怖と戦いながら神峰は突き進む!!

—神峰の能力を除けば、すごく身近な高校生の話ですよね。

キム そうですね。キャラの心情を描ききるってのが、このマンガの面白いところで。そういう核を、失わないようにいこうってずっと思っています。もちろん神峰の、指揮者としての成長も楽しんでもらえたら嬉しいですね。

—ありがとうございました!インタビューは以上となります。

キム おつかれさまでした(ジャケットを着る)!

—あれ…普段そんなの着てましたっけ?

キム いや、今日写真撮るって言われたんで…ね?ちょっと(笑)。

—そこまで準備してくれたんですね(笑)。

「推す!この一話」第3回、これにて終了!新感覚吹奏楽マンガ『SOUL CATCHER(S)』の、さらなる展開に注目だ!次回の更新は3月を予定。何のマンガの“推す!一話”が登場するのか、乞うご期待!
SOUL CATCHER(S)

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